・さーて いよいよはじまるぞ!

 頭で浮かべたイメージ通りに事が運ぶか!?

 

・丸沼温泉 環湖荘の正面玄関の下に張られたテントの下で、日本バーブレスフックの鳥井さんに

 受付をしてもらった。

 受付時に、メジャー代わりの体長測定具を渡され、今まで気になっていた体長測定方法が

 分かり少し安心した。

・普段は丸沼のボートには備え付けていないアンカーも用意されているとの事を競技説明で聞き、

 自分の荷物の中に入れてきたmyアンカーがぐっと重くなった気がした。

 しかもロープが20mもついていると聞き、さらに驚いた。

・「20mも降ろしたら引き上げる時大変なことになるだろうな、腰悪くしそう。」

 「自分のアンカーロープは何mだっけかな??」考えたことが無いので分からずじまい

 まあいいか。

・ルールはともかく1、2、3セッションのエリアを聞いてまたびっくり。

 ほとんど岸からしかフライではやったことが無いのに、エリアが湖全体とは。

 この時点で頭で思い浮かべた以下のような計画が音を立てて崩れた。

・『水位が思ったより少ないので、立ち木の森の奥の方へ行って1stセッションに全力投球する。

 90分しかないので良くて5〜6尾だろう。ここでまず優位に立つ。

 2ndセッションは時間的に釣れないから、2匹かな。1,2セッションで圧倒的優位に立って

 釣れない3rdセッションに1尾釣るか釣れないかの大逆転での巻き返しをさせない。

 それで優勝ー

 まてよ、船の出船は抽選で順番が決まると書いてあった。自分のゼッケンが21ということは

 21番目!?

 その時は、四郎沢のブレイクライン辺り〜出島の沖目あたりで粘って運を天に任せるか。

 どっちにしてもゆうしょーだ』

 と空元気を出すものの、

 本心は「あーあ湖全体しかも3rdセッションなんて全く未知の世界。どこがポイントなの?」

 優勝を諦めた時肩の力が取れすがすがしい気持ちになった。

・さーてもう7時だけど抽選はどうしたのかな?と思っていると、すでに沖へ漕ぎ出した人が??

 えー何だ?走ってスタッフの所へ行くと、もういいですよだって!

 何だ早く言ってよ もう。この時のスタートダッシュの為にニーブーツでなくウエーダーに

 したのに。

・さっさと船を浮かべて、水の中を走って勢いを付けさっと船に乗り移る。

 我ながら決まった!と思った。惰性で水面を滑っているうちに、オールを入れて漕ぎ出す。

 おーしめしめ、立ち木の森のポイントはまだ空いていた。

 ささっとmyアンカーをおろし固定した。ふーっと一仕事終えた感じ。

・「1場所2えさ3に腕」と言われる釣りの極意の内、最も大事な場所を手に入れた。

 程なくして、流れ込みでブッコミの餌釣りをやっているおっさんの声

 「いやー入れ食いだよコリャ」良く見るとファイト中。

 んー思っていたより魚が岸に寄ってるのかな?でも餌なら居眠りしてても釣れちゃうもん。

 と!今度はすぐ近くで、バシャバシャっとファイトする音。あわてて目を凝らすと、

 岸からやっているルアーマン。取り込んだ後の1投目をじっと見つめる。

・「ヒットすると必ず次の1投目は同じポイントへ投げたくなるものよ人間は」と思い、

 ポチョン。えっあんな近く。やはり岸寄り。ミスキャスト?いいやそうではないようだ。

 こりゃまずい、現在地では遠すぎる。アンカーを急いで上げる。myアンカーのロープは7mmの

 ザイルを使っているので、少し太くて水中でもオレンジの色で目立ってしまうが握り易い。

 岸釣りの人との距離を見ながら再度アンカリング。

 このわずかな場所の修正があとあと効いてくることになったようだ。

 1st セッション 

・ピー、ピーと開始の合図。さーてやるかと、もう頭の中は元の優勝ストーリーへと切り替わって

 いた。

 

・まず、#6インター。当たりなし。追いもなし。

・次  #7タイプ1シューティング 同じくダメ

・次  #8タイプ2 追いもなし。えーうっそー 

 と後ろにいた参加者が「コントローラーお願いしますとの声」 ひえー焦る。

 どうしよう?フライを変えてみるかと思ったが、何しろライズが見えない。深いのかもと

 #8タイプ3を出す。

 このラインを購入してから13年が経過し、ほとんど使わない為巻き癖もひどく、

 ラインもごわごわ。タイプ3なのかも記憶が定かでない。

 スプールをつけ変え、ラインを通す。ジーっとラインを引き出している時、ゴトンと音がして

 スプールが外れて湖へボチャン。ありゃーどうしよう。アンカーの横に沈んでいるのが見える。

 タイプ2へ戻そうと思ったが、ラインがガイドを通っておりこれを外すと船上がラインで

 こんがらがってしまう。

・えーいままよと竿をそのまま置き、もう一本の#6タイプ1を沈めるも当たりなし。#6は

 タイプ1とタイプ4を持っているがシューティングヘッドなのでタイプ4へはヘッド交換が必要。

 時間が掛かる。 うーんどうしよう。

 意を決し湖底に沈むスプールを回収する事にした。とにかくバッキングラインをひたすら

 手繰れば、スプールの芯は縛ってあるので回収出来るはずだ。

 一体何m手繰れば回収出来るのか?100ヤード?いーやもっと巻いてある。

 とにかく手繰って手繰って手元にバッキングラインの山が出来てきた頃、スプールが浮き

 上がってきた。

・バッキングが少なくなって来たので、スプールの回転モーメントが大きくなって回りにくくなり、

 上に引っ張られてきたのだ。もう一息、そうだタモで掬おう。とタモに手を伸ばすと

 手繰りが出来なくなるので、クルクルとスプールが沈んでゆく。また手繰る。浮く。タモを握る。

 沈んでゆく。手が3本あればと生まれて始めて思った。

 何度かのトライのあと、ようやくタモで掬うことが出来た。ふーっ恥ずかしい。誰にも見られて

 無いよなと周りを見渡すが、それは1stセッションのまさに佳境の時間。皆さん私の苦労など

 知るはずも無い。

・さー船の中に出来たバッキングラインの山を巻きとらにゃ。

 1mも巻いた所で諦めた。水分を含んだバッキングラインは、これでもかというほど絡み、

 のた打ち回っていて2ndセッションまで掛かりそうな気配。

 仕方なくカッターで切り、フライラインに結びつけた。あと何時間でもない。これで凌ぐしかない。

 山となったバッキングラインをビニールのゴミ袋に押し込み準備は整った。

 一体どれくらいロスッたのか。

 

・今思えば、1stセッションの真っ最中に起こったトラブルを放置しないで、タイプ3をセット

 アップした事が優勝に繋がったと思っている。

 

・気を取り直して第1投。安堵感からカウントダウンをせず何となくリトリーブした。

 もぞっとラインに感触が伝わった。フライにじゃれている時の感触だ。あれっと竿を煽って

 しまった。いっけねーシンキングラインだった。せっかくの当たりを逃した。ちょっとアクションを  入れればヒットしたかも。くそー。もう1投。あーカウントダウン忘れた。

 どれくらいだったかなと思い出しながらリトリーブ開始。と今度はガツンとヒット

 やり取りしてタモに収めた所で、コントローラを呼ぶ。

 エレキで来てくれた。タモごと渡し計ってもらい用紙に記入した。用紙を渡されてから

 「そうそう1stセッションの紙かどうか見て下さい」と言われ、「間違いありません」と答えると、

 にこっと頷き離れていった。

・すごい髭面だなと思いつつ後ろ姿を見送り、さーて次だと振り返った時タモが自分の船の中に

 無いことに気がついた。

 あわてて「すみませーんタモ返して下さーい」と恥も外聞も無く大声が出た。

 コントローラもきびすを返してタモを持ってきた。

 まー今日は色々な事が起こるもんだと思いつつ、広角に探りを入れる。

 結構水中に障害物があるらしく、時々引っかかってしまう。針を切ろうと引っ張ると外れる。

 その都度針先を確認し、シャープナーで研ぐ。これを繰り返していた所、ガツンと2匹目

 これは先ほどより小ぶり。

 程なくして100mくらい離れた参加者が2匹連続でヒットさせ、1stセッションの5〜6匹計画は

 未完で終わった。終了間際には、岸でやっていたブッコミオヤジの奇声も聞こえなくなり、

 岸にいるルアーマンのヒットもなくなって来ていた。

 

・2セッションへ入る前に考えた。

 『そういえば10年ほど前に丸沼であった餌つりのおじさんが言ってたなー。

 魚は朝は浅いところにいるけど時間とともに深い所へと移って行く。

 だから船もすこしづづ深いところへ移動させるんだ』 と

 

・深いところかー。2セッションが始まる前に船を深い所へ移動させた、#6タイプ1の

 シューティングヘッドを、タイプ4へ変えた。

 自分が移動したら、ささっと2〜3槽が寄ってきて私が釣った浅いところに集まって来た。

 

  2nd セッション

 深い所を広角に探る。どれ位経過したのか、突然当たりと共にヘッドシェイクが伝わって来た

 よーし、深み成功とロッドをグーンと立てると、小物だったせいか途中でばれてしまった。

 「いけねー#8のこの竿を思い切り立てると小物はばれ易いんだった。くそー」

 と思っていると、1stセッションで自分がやっていたポイントに入った競技者がヒットさせている

 では無いか!10年前の餌つりのおじさん!嘘つかないで。と悔しがっても後の祭り。

 その後も目の前の別の競技者もヒットさせ自分だけ置いてけ堀の感

 ここで2ndセッション終了。1,2、セッションでダントツで抜け出す作戦は不成功に終わった。

 

・さーて、問題の3rdセッションだ。

 どこか四郎沢の沖合いで、アンカーの届く所で交通事故の様な偶然の一匹を狙うしかないと

 ボートを漕いだ。この辺かなと牛舎跡の位置を見ながらアンカーを降ろすすすーっと引っ張られ

 えーっ何と届かない・・・

 myアンカーのロープが短くて全く届く気配なし。 さあ困った。 どうしたものか

 何しろフライオンリーで船で釣行した経験は1回だけ、遡ること15年前・・・・・

 

 ・・・・・・時期は10月13日(金曜日) 水温13℃ 天気:曇り 微風

 友人と二人で船に乗りえっちらこっちら漕いで、毒蛇の石の辺りでライズがかなりあったので

 やってみた。

 岸近くに投げた黒のウーリバガーにもぞもぞする感触がラインを伝わってくる。

 ゴミでも掛かったかと竿を立てると、フライの後ろに黒い魚影が! あーしまった、

 つついていたのか。

 それっきり、当たりもなくあちこちダム方面を探った。

 もう一艘、フライで釣っている釣り人が見えた。よく見るとキラービーのような陸生のフライで

 ドライを投げている。そのうちバシャバシャとヒット。えードライで釣れるの?知らなかった。

 ドライって春から夏の釣りじゃない?良く見ると枯葉が沢山浮いていてその周辺でぽつぽつと

 ライズがある。早速ドライでと思ったが、用意してなく夏の残り物セールの様な中途半端な

 フライばかり。

 それでも何とか2匹ヒットさせたのであった。・・・・・・・

 

・そう思えばこの時から釣り日記を付け始めたのだった。それ以来14年間、釣堀以外の釣行は

 全て記録に残してあり、今でも読み返すと当時の記憶が鮮明に蘇ってくる。

 会社の後輩(つり経験無し)にこの記録の話をした時、「それは良い思い出になりますね」と、

 私はむっとしたが、別の後輩(釣り経験あり)が「バーカ。思い出のためにやってるんじゃないよ

 、後で活用するためデータとして残しているんだよ、失礼な」と私の代弁をしてくれたことが

 思い出される。

 

・そうそう、15年前も今日みたいに落ち葉が落ちていたな。

 

・もう一つ、・・・・・1996/10/31の記録。この日はダムからの強風、白波が立っていたが、

 風下では カメムシが飛ばされていた。ドライで、立て続けにレインボー、その後ブラウン

 45cm・・・・

 

・そうそう、10年前は風下だった。

 

・真っ青な空を見上げ、風向きを読む。ふーん、国道側の方が正面から当たりそうだ。そっちへ

 行ってみようと再びボートを回す。何しろロープが短い、なるべく船着場に近い方が浅い

 はずと、2ndセッションでやった所から少しダムよりの道路側の崖下に行ってみる。

 道路のすぐ下に船を操り、崖の近くにアンカーをっととと届かない!こんなに岸に近いのに。

 オールを漕ぎながら、水底が見える事を確認しアンカーを降ろす。今度は底に着いた。

 風が強いので、舳先にアンカーを結び、弛ませてロープが斜めになるようにして、船が流れる

 のを防ぐ。

 ガードレールが目の前、岸が近すぎ、沖へ向かってはキャスト出来ない。岸と平行に引くしか

 ない。

 良く見ると目の前の落ち葉が岸伝いに帯のように流れている。目で追ってゆくと、その先に

 突端があり、落ち葉はそこから沖に向かって流れている。突端は回りこめないのだろう。

 ひょっとして結構な流れが出来ているかも。突端付近では渦を巻いているかも。諦め半分で

 通りすがりの一匹に賭ける事にした。

 

 3rd セッション

 タイプ1、3とも当たり無し。まあ仕方が無い。この時間ではもう無理だ。

 1艘近くにいた競技者は船の中で昼寝を始めたようだ。無理も無い。朝からの状況では

 釣れる確率は極めて低いと考えざるを得ない。

 パンを食べ、ペットボトルの飲み物を飲むとこちらも眠くなってきた。

 一応ラインを#6タイプ4シューティングシステムに変えて、落ち葉の流れている所へ投げ

 リトリーブする。

 太陽の光が水面に反射し眩しく、目を細めているうち少し眠くなってきた。

 どれ位繰り返したのか、目を閉じてカウントダウンし、さてと目を開けると、沈んでいるはずの

 ランニングラインが浮いている。落ち葉に乗ってしまったかと少し引っ張るとラインが重い。

 んーゴミでも掛かったかと、本格的に手繰ると魚の感触が!!

 そうカウントダウン中にヒットしたのだった。近くへ寄せてくると

 フライが飲み込まれて見えない。ティペットは1.2号だから切られることは無い。

 もう相手が疲れるのを待てばよいと心に言い聞かせるのだが、左手が勝手にタモに伸びて、

 右手はさらに強引に浮かせようとしてしまう。

 重くは無いが良く走る魚だった。タモに入った。尾びれが長く痩せてはいたが、コンディションが

 回復してきた魚だ

・コントローラーさーん!と大声を出そうとしたら、もう手を挙げてこちらに近づいて来て

 くれていた。

 朝、タモを持って行ってしまったあの髭面の人だ。今日は全部この人に計量してもらった事に

 なる。

 針が飲み込まれているのでそのまま計量に入る。この時無線のやり取りが聞こえてきた。

・「3rdセッションは現時点まで、38cm1匹のみとの事ですが、変わりありませんか?」

・「そのようです。」

・その直後、髭の人が私にメジャーと魚を見せ、39cmですねと言ってくれた。その後、

 「今日は何匹釣りましたか?」と聞いてきた。

 私は「これで3匹目です。」と答えた。

 すると「もう一匹釣れば優勝間違いないですよ。がんばってください。」とのこと。

 えーホント!いっぺんに目が覚めやる気満々となった。

 この時の様に時間が差し迫っている時のバーブレスフックは大変有利である。

 この時も飲み込まれたフックはフォーセップで簡単に取れた。従って、魚が自力で泳ぎだすまで

 水中で支えてやるが、これも短い時間で済んだ。

 時計を見ると、12時15分。 あら、後15分しかないじゃないの。と思っているとあっという間に

 笛の合図。優勝争いに加われただけで、もう満足の気分だった。

 

・くしくも、夢うつつの最中、終了15分前にヒットした、尾びれの長い痩せた39cmが、自分が

 始めに立てた計画すなわちこのような3rdセッションでの一発があっても逆転されないような

 1、2セッションでの圧倒的優位での優勝

 の全く逆の結果になり、自分が一発逆転する立場になった訳である。

 第2回丸沼バーブレスフライフィッシングコンペ表彰式表彰式後の集合写真
                   
   前列中央左のアイボリーの服を着ているのが、私です。肩に賞品のG-Loomisのロッド
   を掛けています。
                                          

・スコアは結局30ポイントだったので、

 1stセッション 2匹  2ポイント 

 2nd       0    27ポイント

 3rd       1    1ポイント

   計      3匹  30ポイント  となっていたようだ。

 そうすると、2セッションでバラシたあの小物が上がっていると、計画通りの展開だったのかも

 知れない。

 

・ 1場所2えさ3に腕の言葉が再度頭をよぎった。

 水量、水深、風、流れを読んだ場所の選択

 タイプ1,2,3、4と限られた時間の中であらゆる手を使った。

 正直フライはどれが良いのか分からず、オリーブマラブーを選択した。

 あとは、

 競技時間中にタイプ3のスプールを水底から回収、再セットアップ

 2匹目のヒット前にコントローラさんがタモを持っていってしまった事態に気がついた事

 myアンカーロープが短くて、3rdセッションのあのポイントにしか船を止められなかった事

 カウントダウン中のヒットに気がつかなかったが、丸呑みにしてくれた魚

 さらに、妙に痩せているのに、尾びれがほんの少し長かった魚

 

・これらの幸運が重なり、このような結果になったと思う。

 これが単なるラッキーなのか、そうでないのか。

 どちらなのか判断できるのは、全く同条件で釣行した他の競技者だけだと思う。

 

・次回への準備として

 タイプ3ラインの更新と糸くず同然のバッキングラインの再利用

 アンカーロープ延長

 容易に外れてしまうスペアスプールの修理

 大物狙いを意識するばかり、1匹の価値を軽く見た結果購入した#8パワフルロッドの変更

 これらを準備すれば、次回は圧倒的優位な展開が期待できるはずある?

 

 副賞としてもらった優勝カップ。この他にも、

 G-loomisのGL3/ 9’#6のロッドやら、リール、ライン、帽子などの商品をいただきました。

 事務局の方、商品を提供していただいたスポンサーの方々に感謝致します。

 第2回丸沼バーブレスフライフィッシング優勝トロフィー

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 b043   釣行記録

場所

丸沼

水温

測定せず

日時

06/10/29

水位

-0.7m位

天気

晴れ

ベイトフィッシュ

 

弱い

その他

第2回丸沼バーブレスフライフィッシングコンペ